過日のやり直し

生物の飼育を中心に、趣味の話など。

野生=健康なのか?

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時々見かけるダスティングの要不要問題。
一般的に、コオロギやミルワームを主食として与えるならカルシウム剤の添加は必須だと言われていますが、
「野生では虫しか食べてない」として不要論を唱える人もいるみたいです。

まあそれは個人の自由といったところですが、もっと広い範囲で考えると
「野生ではこうなっている(だから飼育下でもこうすべきだ)」
という主旨の意見ってけっこう耳にすると思うんですよ。

それってどうなんでしょう。

 

野生での生活環境を飼育にも適用する。
それが正しいと認めるためには、いくつか前提条件が必要になります。

  1. 野生動物は概ね健康である。
  2. 野生動物は自身にとって常に最適な環境に住んでいる。
  3. 野生動物は概ね"幸福"である。

 

・野生動物は健康なのか?

野生動物はしなやかで、たくましく、免疫力が高く、生存能力に優れている……
そんなイメージは、確かにあります。皆あると思います。
しかし実際はどうでしょうか。野外採集していれば病気の個体も怪我している個体も死んでいる個体もたくさん見かけます。
もしかして、強い個体が生き残っているだけでは?
(※これを生存バイアスといいます)

野生のトカゲはカルシウム不足になっていない?
本当にそうでしょうか? クル病になったトカゲは速やかに死んでいるのでは?

飼育下の個体は往々にして野生の個体より長く生きる、ということを忘れてはいけません。

 

・野生動物は最適な環境に住んでいるのか?

これは難しいところです。基本的には、生物は環境に適応していくため、野生の原産地が最適な環境であるはずです。

しかし、例えば開発によって住処を追われたり環境が悪化したりして、好ましくない場所で生活する種もあるでしょう。
そういった種にとっては、野生の環境を再現されても困るかもしれません。

 

・野生動物は"幸福"なのか?

近年は家畜などに対する福祉の概念が発達しており、広い敷地で飼ったり親子が触れ合う時間を長くしたりすることで幸福度を高めようとする取り組みが見られます。
これに対する是非は置いといて(私は否定的な立場です)、「野生=自由=幸福」という図式は古くから根強く残っています。
そういう人が飽きた生物を逃がしたりする(怒)

これは動物に訊くことができない以上、個人の信念の問題となってしまいそうですね。

長く生きることが幸福なのか? 子孫をたくさん残せることが幸福なのか?
というか、魚や爬虫類は幸福を感じることがあるのか?

 

私は、「野生がこうだから」という理由で飼育方法を組み立てていくことは好きではありません。
ペットはペットらしく、人間の都合に合わせて最適化された飼育をされるべきと考えています。
一方で、できる限り野生環境を再現するという人間のエゴや執念は好きです。

飼育という趣味は命を弄ぶ行為に他ならず、たくさんの矛盾や倫理的問題を孕んでいます。
そこで何を考えるか、何をもって自身を納得させるのか、そういう人間らしさを見るのがすごく好きです。

 

結論:ダスティングとガットローディングは両方やれ!