過日のやり直し

生物の飼育を中心に、趣味の話など。

改良ベタの繁殖について

これまで何回かベタ(Betta splendens)の繁殖を行ってきて、
ある程度自分なりのやり方が定まってきたのでメモを残します。

(繁殖初めて1年ちょっとの初心者なので、あまり参考にしないでね)

 

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・親魚の準備

月齢よりは見た目を重視。

オス:フレアリングする元気がある。泳ぎに勢いがある(プラカット)。
   環境が安定していると泡巣を作らないので、泡巣はなくてもいい。
   (これまでに作っていた経験があればいい)

メス:卵で腹が膨れている。上から見ても太くなっているのがわかる程度。

雌雄とも、繁殖を始めるまでは多めの給餌で太らせておく。
とはいえ便秘なんかにならないよう、体調管理が大事。

 

・スケジュールの確認

最初にまとめてしまうと、繁殖は以下のスケジュールで進行していく。

 

・オスを投入

 ↓ 1日後

・メスとお見合い

 ↓ 1日後

・泡巣がなければ中断

・泡巣が十分にできてればメスを投入

 ↓ 2日~3日後

・産卵を確認したらメスを回収

 ↓ 3日~4日後

・稚魚が縦泳ぎ~横泳ぎの段階でオスを回収

 ↓ 初期飼料(3日間)

 ↓ ブラインシュリンプ開始

 

最初にスケジュールを確認し、最も手間がかかる時期が休日になるよう調整する。
個人的に、オス回収と初期飼料投入あたりのタイミングを計りたいので、
そこが土日にあたるようにするとちょうどいい感じ。

 

・繁殖容器

一番成績が良いのは発泡スチロール。(よこはま金魚のけんごさん案)
断熱効果に加えて、フタを閉めることで密閉+暗くできるのが良い。

というのも、オスが泡巣を作るのには

・水面が揺れない

・空気が流れない

・暗い

・環境の変化(水質の変化)

という4条件が重要なので、そこを一気に解決できる発泡スチロールが最適という話。
サイズは60でも可だが、親の取り出しなどがしやすい80が最良。

 

80サイズの発泡スチロールにカルキを抜いた水を入れ、できれば若干ブラックウォーターにする。
普段ブラックウォーターで飼育しているなら、あえて何も入れないのもありかも。

泡巣の基礎となるものを浮かべる。
発泡スチロールの欠片や、納豆パックのフタ、水草、なんでもいい。
マジックリーフは沈んでしまうことがあるので避けたい。

この状態で1日放置する。

 

・オス投入

容器にオスを入れてフタを閉める。
(おそらく)全暗だと泡巣を作れない個体もいるので、穴を空けたりして少しは光が入った方がいいかも。

そして1日放置。

 

・お見合い

泡巣が作られていれば、透明なコップなどにメスと水を入れ、容器に設置する。
メスを見てから泡巣を作り出す場合もあるのだが、絶食期間が長くなる可能性があるため、
この段階で全く(親指の爪ほども)泡巣がない場合は中断する。

そして1日放置。ここからは絶対に餌を与えない。

 

・メス投入

泡巣がちゃんとできていればメスを容器内に解放する。
お互いに攻撃しだすことが多いが、我慢して放置。

産卵は24時間程度では行われないことが多い。
だいたい投入後48時間前後が目安で、もう少し遅いこともある。

喧嘩が激しいように思えても必ず72時間は同居させること。
ボロボロになるのが可哀想と思ってしまうなら、最初から繁殖はすべきでない。

フンがあればスポイトで回収。

・産卵

よく見ないと卵は見えないので注意。
メスの腹が細くなっていたら産卵した可能性が高いためよく確認する。
食卵は経験がないので何とも言えないが、無精卵だと確実に食べるらしい。

メスを取り出してトリートメントする。

繁殖容器のフタは半分閉めるくらいにして光を多めにいれる。
全開にすると風の動きで泡巣が崩壊することがあるので注意。

 

・孵化、稚魚の遊泳開始まで

あまりやることはない。オスを驚かせないように気を付けるくらい。

オスを取り出すタイミングは稚魚が横泳ぎを開始する前後。
取り出したら欠かさずトリートメント。

少し早めにゾウリムシやグリーンウォーターを入れ始めてもいい。

 

・稚魚の初期飼料

ゾウリムシ

インフゾリアの通称もある微生物。孵化直後~2週間くらいは食べる。
増殖が極めてラク。ペットボトルなら臭いも気にならない。
すぐ増えるので、孵化する前に手元に届けば間に合うのも良いところ。

 

グリーンウォーター

植物プランクトンがめちゃくちゃ増えてる水。
わざわざ用意するほどのものではないが、あるなら入れてもいい。
ゾウリムシやミジンコなど微生物の餌となる。
濃すぎると酸欠やらトラブルを招くのでほどほどに。

 

ビネガーイール

酢の中で生きる風変わりな線虫。
キープ自体はラクだが、初期投資が少しかかるのと、増殖が遅い。
慌てて用意しても間に合わないので常にキープしておく必要がある。
ブラインより小さくゾウリムシより大きい絶妙なサイズのため長期間使える。
孵化直後~1か月くらいは食べると思う。

 

ブラインシュリンプ

言わずと知れた稚魚飼料の王。どこでも買える。準備が意外と面倒。
毎日大量に生き餌を用意するための選択肢としては最もポピュラー。
孵化後1週間~2か月くらい、なんなら成魚でもよく食べるが、
ベリスラの原因となるので注意(後述)。

 

ミジンコ

タマミジンコかオオミジンコが使われる。水田から取ってきてもいい(逃がさないでね)。
グリーンウォーターさえあれば増殖できて効率も良い。
産まれたての幼体は稚魚の餌に、成体は若魚の餌となる。
孵化後1週間から容器内で共生させておくのが一番ラクな与え方。

 

・水質管理

これは未だに最適な方法がわかっていない。

孵化後2週間はスポイトでゴミを取って減水分注水でいいと思う。

その後スポンジフィルター付きの水槽に移すのだが、
水質変化のショックが大きく、下手すると全滅する。
サテライトなんかで水合わせするのがいいかもしれない。

 

エアーを入れ始める時は水面を揺らさないようにカバーする。
吐出量もできる限り低くし、強い水流を作らないように注意する。

残渣の掃除に貝を入れておくと良い。(エビでもいい)

水草はあってもなくてもいい。入れると寝床にしたりする。

・人工飼料への切り替え

できる限り早く人工飼料に切り替えたほうが良い。
(成魚も生餌で管理するならそれでいいけど)

市販のものを乳鉢ですり潰して粉状にし、生餌と混ぜて徐々に切り替えていく。

食べないやつもいる、が、腹が減ればたいがい何でも食べるようになる。

 

・ベリースライダーについて

通称ベリスラ。浮き袋に異常があり、常に尾を下げた泳ぎになる。
ホバリングで静止した時に姿勢がおかしいものはベリスラと言っていい。

時には稚魚が全てこうなってしまうこともある。実際あった。辛い。
成長はできるのだが寿命は短いとされる。

おそらく完治はしない。

 

原因はよくわかっておらず、遺伝、餌、水質、細菌、など色々なことが言われる。

個人的に確実視している原因はブラインシュリンプの過剰給餌

①栄養バランスが偏ること
②比重が重く、食後は常に底面に定位すること
 (それによる水圧の影響?)
③残渣やフンによって水質が悪化すること

これらのどれか、もしくは全てによってベリスラが引き起こされると考えている。

なのでブラインシュリンプは毎日与えず、ミジンコなど他の餌との併用が望ましい。

 

それともう一つ、遺伝による発症も十分にありえることだと思っていて、
タイなど海外から輸入される個体がベリスラの因子を持っているのかもしれない。

というのも、ベリスラが顕著に現れるのは稚魚~若魚くらいの時期で、成魚の時期には普通に泳げる個体が多い。
浮き袋異常が治っているわけではないので、年を取るとまた症状が現れ始めるわけだ。

で、ベタのファームでは当然ながら稚魚期に個体を観察する暇などなく、
ある程度大きくなってから個別飼育に移し、出荷されている。

つまり、症状が軽かったり、無症状だけど兄弟魚がほとんどベリスラ、
みたいな個体も多く輸出されている可能性がある。

この辺は実際に現地を見たことがないので、完全に想像でしかないけれども。

 

・個別飼育への切り替え

孵化後2か月から3か月で小競り合いを始めるようになるので、大きいものから隔離する。

個別に移すタイミングが早ければ早いほど成長が早い。
将来有望そうな個体はできるだけ早く隔離すること。無駄なキズも防げる。

毎日の換水が前提であれば500ml程度の容器で十分。
換水も頻繁にやるほど成長が早い。